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佐幸小説。

前サイトから転載。

ちょいグロ。でも云う程じゃないです。

 


壊れ往く君が、何時か。


誰だったっけ。

何だったけ。

何にも判んないだけど。

別に良いけど。

それでも。

それでも…あの紅だけは、愛しいって想った。



容易い。
人の身体なんて、かくも簡単に出来ていて、俺が手首を捻ると、そいつの首が折れるのが伝わってきた。
次は?アイツかな。
首をへし折られた仲間を見て、逃げ出したんだろうそいつに視線を当てる。
にじり、にじり。
走れば、ものの数秒で捕らえられる。
だけど、俺は敢えてゆっくり、ゆっくり、そいつを追い詰めた。

「はやく…ッ!早くしてくれ!
 殺すんなら…さっさと…!!!」

判ってて戦ってんでしょ?
判ってて殺されに来てるんだ。
なら、そんな無様な姿見せないでよ。

判ってて。

俺は、わかんないんだけどね。


真田の首を狙って侵入してきた刺客は、そんなに腕の立つ輩じゃなかった。
そんな程度で此処入ってくるなんて、ある意味拍手だね。

「長…処分に参りました。」
「あー、ご苦労さま。
 その辺だから。」

死体を回収に来た部下達が、散らばる肉にうっと呻いた。

「ちょーっと…やりすぎちゃった?」
「長…この程度の侵入者なら、長自ら手を下さなくとも…。
 我等で十分対応できますのに…」
「いーんだよ。
 鍛錬の一つだと思えばさ。
 買ってでもしないとねぇ。」

じゃあ、湯でも浴びに行ってくるから。
そう言ってその場を離れた。



「誰?」
風呂場の外に気配がした。
「解っているのだろう。」
ああ。勿論さ。ダンナ。
「何か用だった?」
「…先ほどはご苦労であった。」
「いやー、そんなそんな。
 で、何なの?その浮かない声は。」
少し身体を動かすと、ぴちゃっと、湯船から湯が零れて床を叩く音がする。
「その…。
 お主、何か…あったのか?」
「何もありませんよ。
 何でですか。」
「……。
 先ほどの刺客の遺体を、見た。
 お主が一人でやったと聞いた。
 何故だ…?何故あれ程に…」
「ぐちゃぐちゃにしたんですか?って?
 抉って、引きちぎって、腕も足も、あまつさえ首までもいで。」
代わりに俺が言った。
「ッ…!
 佐助…前は、あんなじゃなかっただろう…。
 何故あそこまでする必要がある…?」
「別にいいじゃないですか。
 あいつらも、殺されるの解ってて来てるんだ。
 その辺の城に入る訳じゃない、俺様が守ってる此処に入ってくるんだ。
 生きて帰れる訳ないっしょ。
 どんな殺され方したって、文句言えないんだよ。」

「そうじゃない。」

この人の声は透き通ってるなぁ。
そんな事がふと頭に浮かんだ。

「そうじゃないだろう…。
 なぁ、佐助。
 敵がどうこうじゃない。
 お前が、の話だ。」
「言ってること、よく解らないんですけどね。
 俺は、俺がそうしたいって想うから、やってるだけでしょう。
 貴方がそんな泣きそうな声で言うことじゃない。」

透き通ってた声が、水分を含んだ感じがする。
搾り出すように。
溢れ出ないように。

「俺か…?
 俺がいけないのか?
 佐助を…そんな風にしたのは…、俺か?」
「…だったとして、何ですか?
 それでも、俺が決めたことでしょう。
 アンタを守る為に、アンタに使われる為に、今此処に居る。」

そう、俺は知ってる。
ちゃんと判ってる。
アンタが誰か。
何で此処に居るか。

だけど…。

「ずっと…アンタが小さい時から…。
 アンタの為だけに、この身を使って来た。
 アンタが笑うなら。
 泣かないなら。
 悔しい思いをしないなら。
 守れるなら…。
 殺される恐怖も、殺す罪悪感も、見てみぬ振りが出来た。
 だけどさ…。
 やっぱ、壊れちゃうんだね。どっか。
 ずっとこういう事してるとさ。
 判らないんですよ。全部。
 人を斬った時の痛みとか、攻撃される時の怖いって気持ちとか…。
 前みたいに、感じないようにしてるんじゃなくて、ホントに。
 戦ってると、夢中になって、制御なんか利かないんですよ。
 
 でもそれが怖いんじゃない。
 そんなコトは、どうでも良いんだ…。」

その先を、言うか言うまいか一瞬迷った。
迷っただけだったけど。

「そのうち…。
 アンタまで判んなくなるんじゃないかって。
 それが…怖くて仕方ない。」

アンタとの間に、今、一枚隔たりがあってよかった。
じゃないと、アンタに見せることになってたから。
ずっと見せた事ない、止まらない雫を。

「佐助…。」

「なんですか。」

声だけなら、何にも無いように見せかけられる。
泣いているのも、悟られない。
そういうのは、得意だ。

「お主は、いつも泣いておったな。」

「!!」

「戦の後。
 俺の護衛で刺客を倒した後。
 仲間が討たれた後。
 
 実際に泣いている姿を見たことは一度も無い。
 だけど、俺には解っていた。
 佐助に、辛い思いをさせている事など。」

「何を…」

「本当は、解っていて、傍に置いていた。
 俺には、お前しか考えられぬから。
 それが俺の慾でしかないと解っていても…。
 お前を…佐助を、縛り付けていた。

 だが…。」

ダンナは、続けた。

「それでも、お前を手放す気は無い。
 お前が俺に誓ってくれたあの日から、一度も、その想いは曲げておらん。
 例えお前が壊れても…俺の事が判らぬようになっても。」

「…そろそろ…上がりたいんだけど…。
 いい加減、のぼせそうだし。」

少しおどけた感じで言った。

「あ、ああ、済まない。
 こんなところで長話を…。
 では、ゆっくり休んで…」
「上がったら、ダンナの部屋に行きます。
 多分俺、泣いてると想うんで、抱き締めて下さい。
 一晩中、子供あやすみたいに、背中撫ぜて下さい。
 大丈夫だって、何度も何度も、馬鹿みたいに言って下さい。
 一生忘れないように…ずっと傍に居て下さい。
 
 それから…。

 それから、貴方は貴方のままで居て下さい。」

それが俺の唯一の判ることだから。

「…あぁ、解った。
 では…部屋で待っておるぞ。」

俺は溢れる雫を拭わずに、湯から出た。




―終




このまま佐助は壊れたままだと想います。
でもきっと、幸村の事は、判らなくならないと…いいな(笑)
俺の文才が無い所為で、幸村が解ってたのに佐助を縛り付けてたから…みたいになってますが。
ちゃんと、佐助は佐助の意思で此処にいるんですよ。

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