[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
佐幸小説。
前サイトから転載。
ちょいグロ。でも云う程じゃないです。
壊れ往く君が、何時か。
誰だったっけ。
何だったけ。
何にも判んないだけど。
別に良いけど。
それでも。
それでも…あの紅だけは、愛しいって想った。
容易い。
人の身体なんて、かくも簡単に出来ていて、俺が手首を捻ると、そいつの首が折れるのが伝わってきた。
次は?アイツかな。
首をへし折られた仲間を見て、逃げ出したんだろうそいつに視線を当てる。
にじり、にじり。
走れば、ものの数秒で捕らえられる。
だけど、俺は敢えてゆっくり、ゆっくり、そいつを追い詰めた。
「はやく…ッ!早くしてくれ!
殺すんなら…さっさと…!!!」
判ってて戦ってんでしょ?
判ってて殺されに来てるんだ。
なら、そんな無様な姿見せないでよ。
判ってて。
俺は、わかんないんだけどね。
真田の首を狙って侵入してきた刺客は、そんなに腕の立つ輩じゃなかった。
そんな程度で此処入ってくるなんて、ある意味拍手だね。
「長…処分に参りました。」
「あー、ご苦労さま。
その辺だから。」
死体を回収に来た部下達が、散らばる肉にうっと呻いた。
「ちょーっと…やりすぎちゃった?」
「長…この程度の侵入者なら、長自ら手を下さなくとも…。
我等で十分対応できますのに…」
「いーんだよ。
鍛錬の一つだと思えばさ。
買ってでもしないとねぇ。」
じゃあ、湯でも浴びに行ってくるから。
そう言ってその場を離れた。
「誰?」
風呂場の外に気配がした。
「解っているのだろう。」
ああ。勿論さ。ダンナ。
「何か用だった?」
「…先ほどはご苦労であった。」
「いやー、そんなそんな。
で、何なの?その浮かない声は。」
少し身体を動かすと、ぴちゃっと、湯船から湯が零れて床を叩く音がする。
「その…。
お主、何か…あったのか?」
「何もありませんよ。
何でですか。」
「……。
先ほどの刺客の遺体を、見た。
お主が一人でやったと聞いた。
何故だ…?何故あれ程に…」
「ぐちゃぐちゃにしたんですか?って?
抉って、引きちぎって、腕も足も、あまつさえ首までもいで。」
代わりに俺が言った。
「ッ…!
佐助…前は、あんなじゃなかっただろう…。
何故あそこまでする必要がある…?」
「別にいいじゃないですか。
あいつらも、殺されるの解ってて来てるんだ。
その辺の城に入る訳じゃない、俺様が守ってる此処に入ってくるんだ。
生きて帰れる訳ないっしょ。
どんな殺され方したって、文句言えないんだよ。」
「そうじゃない。」
この人の声は透き通ってるなぁ。
そんな事がふと頭に浮かんだ。
「そうじゃないだろう…。
なぁ、佐助。
敵がどうこうじゃない。
お前が、の話だ。」
「言ってること、よく解らないんですけどね。
俺は、俺がそうしたいって想うから、やってるだけでしょう。
貴方がそんな泣きそうな声で言うことじゃない。」
透き通ってた声が、水分を含んだ感じがする。
搾り出すように。
溢れ出ないように。
「俺か…?
俺がいけないのか?
佐助を…そんな風にしたのは…、俺か?」
「…だったとして、何ですか?
それでも、俺が決めたことでしょう。
アンタを守る為に、アンタに使われる為に、今此処に居る。」
そう、俺は知ってる。
ちゃんと判ってる。
アンタが誰か。
何で此処に居るか。
だけど…。
「ずっと…アンタが小さい時から…。
アンタの為だけに、この身を使って来た。
アンタが笑うなら。
泣かないなら。
悔しい思いをしないなら。
守れるなら…。
殺される恐怖も、殺す罪悪感も、見てみぬ振りが出来た。
だけどさ…。
やっぱ、壊れちゃうんだね。どっか。
ずっとこういう事してるとさ。
判らないんですよ。全部。
人を斬った時の痛みとか、攻撃される時の怖いって気持ちとか…。
前みたいに、感じないようにしてるんじゃなくて、ホントに。
戦ってると、夢中になって、制御なんか利かないんですよ。
でもそれが怖いんじゃない。
そんなコトは、どうでも良いんだ…。」
その先を、言うか言うまいか一瞬迷った。
迷っただけだったけど。
「そのうち…。
アンタまで判んなくなるんじゃないかって。
それが…怖くて仕方ない。」
アンタとの間に、今、一枚隔たりがあってよかった。
じゃないと、アンタに見せることになってたから。
ずっと見せた事ない、止まらない雫を。
「佐助…。」
「なんですか。」
声だけなら、何にも無いように見せかけられる。
泣いているのも、悟られない。
そういうのは、得意だ。
「お主は、いつも泣いておったな。」
「!!」
「戦の後。
俺の護衛で刺客を倒した後。
仲間が討たれた後。
実際に泣いている姿を見たことは一度も無い。
だけど、俺には解っていた。
佐助に、辛い思いをさせている事など。」
「何を…」
「本当は、解っていて、傍に置いていた。
俺には、お前しか考えられぬから。
それが俺の慾でしかないと解っていても…。
お前を…佐助を、縛り付けていた。
だが…。」
ダンナは、続けた。
「それでも、お前を手放す気は無い。
お前が俺に誓ってくれたあの日から、一度も、その想いは曲げておらん。
例えお前が壊れても…俺の事が判らぬようになっても。」
「…そろそろ…上がりたいんだけど…。
いい加減、のぼせそうだし。」
少しおどけた感じで言った。
「あ、ああ、済まない。
こんなところで長話を…。
では、ゆっくり休んで…」
「上がったら、ダンナの部屋に行きます。
多分俺、泣いてると想うんで、抱き締めて下さい。
一晩中、子供あやすみたいに、背中撫ぜて下さい。
大丈夫だって、何度も何度も、馬鹿みたいに言って下さい。
一生忘れないように…ずっと傍に居て下さい。
それから…。
それから、貴方は貴方のままで居て下さい。」
それが俺の唯一の判ることだから。
「…あぁ、解った。
では…部屋で待っておるぞ。」
俺は溢れる雫を拭わずに、湯から出た。
―終
このまま佐助は壊れたままだと想います。
でもきっと、幸村の事は、判らなくならないと…いいな(笑)
俺の文才が無い所為で、幸村が解ってたのに佐助を縛り付けてたから…みたいになってますが。
ちゃんと、佐助は佐助の意思で此処にいるんですよ。
03 | 2025/04 | 05 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | ||
6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 |
20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 |
27 | 28 | 29 | 30 |
コヤスタケヒトに夢中。
ユサコウジにも夢中。
コメント大歓迎。
何でもどうぞ。