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佐幸小説。
前サイトからの転載。
死にネタです。ご注意をば。
螺旋。
雨が降りそう。
空はどんよりと暗い。
泣きそうで泣かない、俺の心みたい。
それでも、今日も俺は何時もの場所へ向かう。
それしか、今の俺が出来ることなんかない。
城下が見渡せる、小高い山の上。
周りには何も無い。
立てられた大きな石が、今のあの人。
「遅くなってすまぬ。
雨が降りそうであったから…傘を捜しておったのだ。
ほら、これ。お前の部屋にあったのだな。
お前と一緒に祭りへ行った時…通り雨に遭って、急いで買った…。
二本買おうとする俺に、お前は一本で良いと…。」
その方が、寄り添う理由になるでしょ?
あの時の声が、たった今言われたみたいに、耳に焼き付いている。
ぽつり。
雫が天から落ちる。
嗚呼、降出した。
俺は傘を開いて、寄り添うように、石に並んだ。
あの日のように。
今日は、俺が傘を持っているけれど。
「な…佐助。
何時になったら、お前に逢えるんだ…。
お前に逢いたいんだ…。」
距離は至極近い。
そう、今、この足の下。
土を掘り返せば、そこに。
雨が、一粒二粒個数を増す。
見つめる足元が、濡れて濃い色に変わる。
ぽつり。
ぽつり。
ぽつり。
ぽつり。
気が、狂いそうだった。
もう、耐えられなかった。
彼は貫かれ、口から真っ赤な体液を撒き散らしながら、俺に言ったのだ。
生きて。
貴方は、生きて。
必ず。生き抜いて。
それは。
最期の願い。
最期の約束。
今まで幾度も交わした約束。
その中で、多分最も彼がしたかった約束。
いや…彼の望み。
朽ちていく彼が、俺の為に残した最後の言葉。
あの声で。
あの、祭りの日、寄り添う理由になると照れながら言った。
何度も胸を熱くさせた。
此の世で最も愛しいと思える。
あの声で!
残酷だ。
俺に、何が残っているのだ。
お前なしで、何が出来る。
どうして生きられる。
生き抜くことが…できるというのだ。
「くっ…ふっ……」
耐えられなくて、涙が溢れた。
持っていた傘が、手から零れて、墓石に当たり、次に地面に落ちた。
そして、俺自身。
立っていられなくて、その場に泣き崩れた。
泣いて、泣いて。
死にたいと。
そう想った。
「だんな」
声がした気がして。
いよいよ気が違ったのだと想った。
それでも、従順にその声を探す自分は、きっと滑稽だった。
くるくると見渡しても、当然愛しいひとは居なくて。
ただ。
眼に入った紅い傘に、何かをみた。
今まで気付かなかった。
傘の内側。
とても小さく、繊細な字で。
それは、まるで愛の告白。
貴方が幸せであらんことを。
我が常に傍にあらんことを。
例えどちらか先に発とうとも。
また必ず廻り逢わんことを。
この傘と、貴方に誓う。
整った、美しい字。
俺が書くのと豪く違う。
涙が。
溢れた。
ねぇ。あなたの事が好きだった。
強い腕や、優しい眼差し。
匂いも、声も、その熱も全部。
すごく好きだった。
今、それを無くして。
それでも、貴方が好きで。
初めて、好きになった人。
何時も傍に居て。
抱き締めて、甘やかして、俺だけを見ていた。
好きだった。
こんなにも、貴方に焦がれて。
自分ではどうしようもない程に、貴方への想いは溢れる。
もう、届けることは出来ないのに。
ただ、雨に打たれて、冷えていく体温。
貴方が居たあの日までは、それすら抱き締めて、消して寒さを感じることなど無かったのに。
生きて。
貴方は、生きて。
必ず。生き抜いて。
その言葉を。
裏切っても。
貴方は許してくれますか。
転がる傘の内側。
流れ込んだ雨はその言葉を流した。
黒く流れていく誓いの言葉。
只その想いは今も。
幾重時を重ねても。
二人は抱き合う。
それが今でなくとも。
必ず。
終
弱い幸村が書きたかったんです。
前サイトからの転載。
死にネタです。ご注意をば。
螺旋。
雨が降りそう。
空はどんよりと暗い。
泣きそうで泣かない、俺の心みたい。
それでも、今日も俺は何時もの場所へ向かう。
それしか、今の俺が出来ることなんかない。
城下が見渡せる、小高い山の上。
周りには何も無い。
立てられた大きな石が、今のあの人。
「遅くなってすまぬ。
雨が降りそうであったから…傘を捜しておったのだ。
ほら、これ。お前の部屋にあったのだな。
お前と一緒に祭りへ行った時…通り雨に遭って、急いで買った…。
二本買おうとする俺に、お前は一本で良いと…。」
その方が、寄り添う理由になるでしょ?
あの時の声が、たった今言われたみたいに、耳に焼き付いている。
ぽつり。
雫が天から落ちる。
嗚呼、降出した。
俺は傘を開いて、寄り添うように、石に並んだ。
あの日のように。
今日は、俺が傘を持っているけれど。
「な…佐助。
何時になったら、お前に逢えるんだ…。
お前に逢いたいんだ…。」
距離は至極近い。
そう、今、この足の下。
土を掘り返せば、そこに。
雨が、一粒二粒個数を増す。
見つめる足元が、濡れて濃い色に変わる。
ぽつり。
ぽつり。
ぽつり。
ぽつり。
気が、狂いそうだった。
もう、耐えられなかった。
彼は貫かれ、口から真っ赤な体液を撒き散らしながら、俺に言ったのだ。
生きて。
貴方は、生きて。
必ず。生き抜いて。
それは。
最期の願い。
最期の約束。
今まで幾度も交わした約束。
その中で、多分最も彼がしたかった約束。
いや…彼の望み。
朽ちていく彼が、俺の為に残した最後の言葉。
あの声で。
あの、祭りの日、寄り添う理由になると照れながら言った。
何度も胸を熱くさせた。
此の世で最も愛しいと思える。
あの声で!
残酷だ。
俺に、何が残っているのだ。
お前なしで、何が出来る。
どうして生きられる。
生き抜くことが…できるというのだ。
「くっ…ふっ……」
耐えられなくて、涙が溢れた。
持っていた傘が、手から零れて、墓石に当たり、次に地面に落ちた。
そして、俺自身。
立っていられなくて、その場に泣き崩れた。
泣いて、泣いて。
死にたいと。
そう想った。
「だんな」
声がした気がして。
いよいよ気が違ったのだと想った。
それでも、従順にその声を探す自分は、きっと滑稽だった。
くるくると見渡しても、当然愛しいひとは居なくて。
ただ。
眼に入った紅い傘に、何かをみた。
今まで気付かなかった。
傘の内側。
とても小さく、繊細な字で。
それは、まるで愛の告白。
貴方が幸せであらんことを。
我が常に傍にあらんことを。
例えどちらか先に発とうとも。
また必ず廻り逢わんことを。
この傘と、貴方に誓う。
整った、美しい字。
俺が書くのと豪く違う。
涙が。
溢れた。
ねぇ。あなたの事が好きだった。
強い腕や、優しい眼差し。
匂いも、声も、その熱も全部。
すごく好きだった。
今、それを無くして。
それでも、貴方が好きで。
初めて、好きになった人。
何時も傍に居て。
抱き締めて、甘やかして、俺だけを見ていた。
好きだった。
こんなにも、貴方に焦がれて。
自分ではどうしようもない程に、貴方への想いは溢れる。
もう、届けることは出来ないのに。
ただ、雨に打たれて、冷えていく体温。
貴方が居たあの日までは、それすら抱き締めて、消して寒さを感じることなど無かったのに。
生きて。
貴方は、生きて。
必ず。生き抜いて。
その言葉を。
裏切っても。
貴方は許してくれますか。
転がる傘の内側。
流れ込んだ雨はその言葉を流した。
黒く流れていく誓いの言葉。
只その想いは今も。
幾重時を重ねても。
二人は抱き合う。
それが今でなくとも。
必ず。
終
弱い幸村が書きたかったんです。
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