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前サイトからの転載。
ちゅーくらいまで。
この彩に誓って。
「じゃ、まぁ明日の朝には帰ってくるから。
くれぐれも、旦那のこと頼んだよ。」
「御意。
お気をつけて!」
隊の一人にそう言付けると、佐助はスッと姿を消した。
残された忍が、すぐさま幸村の部屋付近に就けようとしたその時。
「佐助は何処に行ったのだ。」
部屋から、忍顔負けの気配を消した幸村が、怖い顔して現れた。
「ゆっ…幸村様っ!!」
「何処へ行ったのだ。
こんな夜遅く。
申してみよ。」
「聞いてらっしゃったのですか?(一体何処にいらっしゃったのだ…お部屋には聞こえないであろうに!)」
佐助に幸村護衛を申し付けられた忍が、もごもごとしていると、幸村が更に続ける。
「申さぬのか!それなら、佐助共々、隊から外すに仕様が無いでござる。」
「わー!それは…困ります!
いえ、あの…某はさておき、長まで…」
「仕方ないでござろう!
あやつがこう、そうそうと夜に城を抜けるような事があるのであれば。
このひと月、度々このようなことがあったであろう。
何故、某が呼んだ時に、あやつがおらぬのだ!」
「ですから、代わりに私めが…。」
「お…お主では、代わりにならぬこともあるのだ!
とにかく、佐助が何処に行ったか申してみよ!」
顔を赤くして、幸村が捲くし立てるので、仕方なくいう事にした。
そもそも、自分の直属の上司は佐助であれ、その更に上司の幸村のいう事だ。仕方ないだろう。
(っていうか、痴話喧嘩に巻き込まないで欲しいんだけど…)と、正直な気持ちには蓋をした。
完全に気配を消していた訳じゃ無かったが、まさか気付かれるとは想って居なかった。
「帰ったか。
降りて参れ。」
空は未だ暗かったが、もう直ぐ夜明け。
「こんな時間まで起きて待ってたの…?」
云われるままに、幸村の部屋に降りた。
「脱げ。」
佐助の質問には答えずに、短い言葉を掛ける。
少し怒ったような眼。
声も、何時もより少しだけ低くて。
「…どしたの?
大胆だねぇ、旦那。」
ちょっとおどけて言ってみせると、布団の上で正座をしていた幸村が立ち上がる。
そのまま佐助にずいっと近づくと、右腕を捕らえ、ぐいっと袖を捲り上げた。
仕事に行っていた訳ではない佐助は、何時もの忍装束ではなく、普通の着物を着ていた。
肩まで捲くりあげられ、晒された素肌をじっと観察する。
何も無いのを確認したようで、次に左腕を掴まれた。
幸村が何がしたいのか解らない佐助は、好きなようにさせていたのだが、ハッと気付いた。
「旦那、もしかして、聞いた?」
左腕にも何も無いことを確認すると、今度は着物の合わせに手を掛けて来た。
「ちょ…やっぱ、聞いたんだ?
待って、ちゃんと言うから。
ちゃんと、自分で見せるから。」
佐助の言葉に、手を止めた。
それは、佐助が幸村の両の手首を掴んだのもあったのだが。
「…本当なのだな?
あやつの云っておった事は。」
「あー…もう。まさか知ってると想ってなかったから、そこまで口止めしてなかったんだよねぇ…。」
佐助は一度幸村に背を向け、自ら着物の合わせをぐっと引き、腕を抜いた。
上半身を肌蹴さけ、幸村に向き直った。
「旦那。」
俯いたままの幸村が、ゆっくり顔を上げた。
忍にしては、傷の少ない肌だと想う。
それはきっと佐助の優秀さ故。
余り焼けていない、白い肌の、左胸に、それは十分な存在感だった。
心臓の真上の皮膚に、鮮やかな赤い六文の刺青。
「六文銭…」
張り詰めていた幸村の表情が、ほんの少し和らいで、しかし直ぐにまた強張った。
「ちゃんと全部仕上がって、綺麗になってから見せたかったんだよ。
でも、そんな…旦那が怒ると想ってなかった…。
ごめん。」
佐助はそう言って、幸村を抱きしめた。
「何故…そのような…。
傷をつけてまで、そのようなものを…。」
「アンタのもんだって。アンタしか要らないって印を付けて、何がいけないの?
俺、アンタのでしょ。」
「それはっ…!
でも…そんなことせずとも…。
それに…それに俺はてっきり…名前を彫って…六文銭とは想わぬ…」
腕の中で、ぎゅっとしがみ付き、ぼそぼそと言葉を漏らす幸村に、佐助は合点がいった。
「それで、怒ってたの?
俺が自分の名前入れに行ってるんだと想って?」
背中を優しく撫ぜると、小さく震えるのが解った。
戦国の今。
武将が自らの名前を身体に刻む。
それは、負け戦に臨み、命を絶つことを決意した証であった。
あるものは、針を刺す痛みを、戦から逃げたくなる己への戒めの為に。
あるものは、戦場で堕ちた後、例え御首がなくとも、判別がつくよう、己の存在証明として。
それは総じて、己が死ぬ事を受け入れたという事。
幸村には許せなかった。
自分から、佐助が離れていく決意をしたのだと。
「あのね…旦那。
今更死ぬのなんて何とも想わないって…。てか、常にその覚悟がなきゃ、アンタ守れないでしょーが。
それにさ、俺、忍だよ?死んでからでも、敵国に自分が真田の忍だったって知らせる訳にいかないでしょー?
名前なんて入れないって…。
まぁ、六文銭もマズいっちゃマズいけどさ。俺、そんなヘマしねーし…。」
両手で、幸村の頬を優しく包み、自分に向けさせた。
目元が少し赤い。
「何より。
アンタ置いてどっか行く訳無いデショ?この俺様が。
こんなにアンタに惚れてんのに。」
乾いた唇に、深く口付ける。
舌で歯列をゆっくりなぞり、幸村の舌が応えるのを待つ。
躊躇う様な幸村の舌に、佐助は自分の舌を絡ませ、強く吸い上げる。
唇を離した時には、乾いていた唇が、唾液で濡れて光っていた。
「どうかこの命尽きる時が、幸村様と同じでありますことを。
この六文銭に賭けて。」
幸村の手を取り、胸の赤い証に指を這わせた。
未だ刻まれて時の経たないその跡は、ちりっと小さな痛みを佐助に伝えた。
終。
「このいろにちかって」と読みます。
刺青ネタ。
武将が名前を入れるってのは本当らしいですよ。
サイトに載せてたときは、続きにエロがあったのですが、別に必要ないので載せません。
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